全国有料老人ホーム協会主催「シルバー川柳」
第1回 (平成13年)入選作品
- 「お若いわ」その一言でお得意さん
- あなたには言えない遊び軽い嘘
- 口づけも入歯ガクガク老いの恋
- すらすらと嘘が言えますボケてない
- 残るのも先に逝くのもいやと言う
- 人恋し恋とは違う人恋し
- 老妻がホームで宣言主婦卒業
- 化粧する昔話も化粧する
- 三回忌頃から光る未亡人
- 次の世も一緒と言えば妻は NO
- 主治医には 内緒 鍼灸まむし酒
- 逝く日まで恋をする気の紅を買う
- なってみりゃあの年寄りは偉かった
- 合コンだ入歯みがいて紅さして
- 昔酒、今は病院はしごする
- 夫より三歩前行く老後かな
- 売るほどの病を持って長生きし
- 昼寝して「夜眠れぬ」と医者に言い
- 苦虫を永年噛んで歯も抜けた
- 赤い糸夫居ぬ間にそっと切る
- 見くびるな賞味期限は切れとらん
- 長生きは幸か不幸か実験中
- 人生も野球も最後はホームです
- 70 歳で年少組とはまいったな
第2回(平成14年)入選作品
- 若返り亡夫にすまぬ旅の宿
- 来世も一緒ですワと妻の世辞
- 天国の友へ昼寝で会いにゆく
- 耳遠くあの世のお呼び聴こえない
- 云いすぎてゴメンが云えぬ夜の長さ
- 欠点を個性と唱え婆生きる
- 医者よりも様子良く聞く見舞い客
- 還暦は鼻たれ小僧おらが村
- いつもビリ天国行きもビリで良し
- おんぶした子をリストラでまた背負い
- 驚いたあの人あの年あの色気
- 着メロに軍歌を入れて歳がバレ
- 喜寿過ぎの浮気は妻に励まされ
- わたしの手ひっぱらないであの世から
- 忘れ物とりに戻れば又忘れ
- 還暦は「もう」と「まだ」とを使い分け
- 徘徊と噂されて散歩を止め
- ネクタイを捨てたら消えた肩の凝り
- あの世まで住基ネットに見送られ
- 体調の良い日は医者をはしごする
- 世界一とうとう寿命だけとなり
- 年の差がだんだん開く妻の謎
- あれはそこそれはあそこにちゃんとある
- 家事おぼえ妻の手抜きが見えてくる
- 居酒屋で「出世払い」のツケ利かず
- おい!おまえ!いつしか妻の名を忘れ
- 妻が書く老後の計画俺イナイ
- 資産分けすめばシルバー蚊帳のそと
- 深夜なる受話器とる前深呼吸
第3回(平成15年)入選作品
- 眼鏡かけ眼鏡はどこだと妻に訊き
- より添うて今は夫により添われ
- 体力が落ちても押せる横車
- 百歳を世話するむすめ喜寿むかえ
- 口喧嘩相手なくして日の長し
- 持て余す暇を余裕と言い聞かせ
- 年金に安・近・短の旅学び
- 手をひいたつもりが孫に手をひかれ
- 「老」の字に「ご」の字ついた時代あり
- 流行語覚えたころはすたってる
- まだ古希か米寿の兄は軽く言う
- カルチャーに先輩顔の妻がいる
- 長老に年を聞いたら俺の下
- 夕陽浴び花摘む妻の背のまるさ
- まだいけるもう一度だけ犬を飼う
- 脳みそに移し変えたい顔のしわ
- 不出来な子ふるさと捨てず親を看る
- 健康に粗食が合うと手抜き妻
- 資産家は最期に親戚ドッと増え
- それあれで通じるまでの幾山河
- 年をとり美人薄命うそと知る
- 旅行好き行ってないのは冥土だけ
- 年賀状書かねばあの世とうわさされ
- 飲め飲めと差し出されるのは薬だけ
第4回(平成16年)入選作品
- 歳とれどなぜ口だけは歳とらぬ
- 座る時立つ時ひざが手を頼り
- 定年後関白の座をそっと降り
- 「愛してる」じじの返事は「馬鹿言うな」
- 来てやった貰ってやったで五十年
- 離れ住む子らに病む日も無事と書き
- 還暦はシルバーシートを浅く掛け
- つまずいた小石に歳を教えられ
- 聞こえぬも心配風呂場の下手な歌
- 介護され初めて気付く親不孝
- 飲んだっけちり籠のぞき確認し
- 「呆けちゃった!」難を逃れる名セリフ
- 聞くたびに話が違う「若い頃」
- 妻の愚痴お茶と一緒に軽くのむ
- 共白髪まっぴらごめんと妻茶髪
- 孫優さしさっきも聞いたと言い出さず
- 長寿者に「ひけつ」なにかと医者が聞き
- おれおれと名のって妻にすぐ切られ
- こんにちは笑顔で答えて名を聞けず
- 補聴器を外し無敵の父となる
第5回(平成17年)入選作品
- また一つプライド捨てて楽に生き
- 老いて子に従うのにも一苦労
- かじられたスネで支える身の重さ
- 年金にボーナス無いのと孫が聞き
- 診察券五枚で週休二日制
- 自分史が増える追記で終わらない
- 見栄張って杖は要らぬと傘を持ち
- 年金と相談をして義理を欠き
- 病歴はなしで話の輪を外れ
- 老木は枯れたふりして新芽出し
- 老医師の過労気遣う老患者
- 持たされた携帯つまりは迷子札
- 化粧品リフォーム詐欺と妻は言う
- いびきより静かな方が気にかかり
- 介護保険満期はいつかとついたずね
- 表札で生きる亭主の三回忌
- 忘れえぬ人はいるけど名を忘れ
- 身内より心が通う介護の手
- この動悸昔は恋で今病
- 年だもの最後だわねとまたハワイ
第6回(平成18年)入選作品
- チョイワルもチョイヨボですネと妻が言う
- 老体に耐震補強か杖一本
- 年金を親子でもらう家が増え
- カードナシ。ケータイもナシ。被害ナシ
- 化粧品ムダだと妻にまだ言えず
- 医者と妻急にやさしくなる不安
- あちこちの骨が鳴るなり古希古希と
- 八十路越え大器晩成まだ成らず
- 祖母の知恵教科書よりも役に立ち
- デパートで買い物よりも椅子探し
- 口喧嘩たまに勝っても待つ試練
- 腹立ちを仏に聞かすひとり言
- メモ帳のしまい場所にもメモが要る
- ホームとは人間模様の万華鏡
- まっすぐに生きてきたのに腰まがる
- 人生の時間は減るのに暇が増え
- デザートは昔ケーキで今くすり
- 定年で働き蜂からおじゃま虫
- 威張ってた上司地域で役立たず
- 退職後犬の散歩で知る近所
第 7 回(平成19年)入選作品
- とって見てやっぱり解らん年の功
- 分割じゃ食ってはいけぬ離婚やめ
- 千の風きいて買おうか迷う墓
- 秋茄子のきらいな嫁で拍子ぬけ
- その昔惚れた顔かと?目をこすり
- 転んでは泣いてた子が言う「転ぶなよ」
- 街鏡そっと猫背の老い伸ばす
- 一日は長くて一年矢の如し
- 借りた辞書拡大鏡も添えてあり
- 無病では話題に困る老人会
- いたわりも耳が遠くてどなりごえ
- 優先席座って行き先山歩き
- 食べたこと忘れぬように持つ楊枝
- 古希になお叱ってくれる母が居る
- 世辞言わぬデジタルカメラの解像度
- 万歩計歩数のびるが距離のびず
- 驚いた(惚)ホれると(惚)ボけるは同じ文字
- 人格の格差広がる高齢者
- 定年後引き算ばかり上手くなり
- 介護保険掛け捨てにする果報者
第8回(平成20年)入選作品
- 老人の記憶を試す特別便
- 九十を過ぎても気にする中国産
- 原油高免許を返すふんぎりに
- 居れば邪魔出かけりゃ事故かと気をもませ
- 足腰を鍛えりゃ徘徊おそれられ
- あの世ではお友達よと妻が言い
- 来世も一緒になろうと犬に言い
- 七夕や夫の願ひをそっと見る
- 人の字を真似て二人で支え合い
- 亡き妻と朝は分け合う健康茶
- ボールなげ孫にほめられちょっとてれ
- 限界だ元号三つの齢計算
- 遺言を書いた安堵で長生きし
- この墓も入居間近とよく磨く
- 若作りした日に席を譲られて
- 混浴は足湯だったと友ぼやき
- 年寄りに渡る世間は罠ばかり
- 医院前紅葉マークの展示場
- 補聴器をそっとはずして聞く小言
- 食事会薬でしめておひらきに
第9回(平成21年)入選作品
- 定年で田舎戻ればまだ若手
- 我が家にも政権交代夢にみる
- ケータイの返事をしようと葉書出し
- 五十年かかって鍋と蓋が合う
- マイケルの真似を発作と間違われ
- 夫婦仲社会福祉と妻は言い
- 証人が一人もいない武勇伝
- 万歩計つけて帰りに車呼び
- 老後にと残した夢も夢のまま
- 物忘れ昔からだと負け惜しみ
- バラに似て妻も花散りトゲ残し
- 美しく老いよと無理なことを言う
- その昔恐竜見たかと問う曽孫
- 置き忘れ知られたくなく大掃除
- 古希過ぎりゃ嫉妬もされぬ朝帰り
- 聞き取れず隣にならって空笑い
- 注目を一身に受け餅食べる
- 妬ましや妻の犬への言葉がけ
- お辞儀して共によろけるクラス会
- 定年にエプロン貰い嫌な予感
第10回(平成22年)入選作品
- 厚化粧笑う亭主は薄毛症
- 「アーンして」むかしラブラブいま介護
- 新党も肩書取れば老人会
- 食っちゃ寝て豚ならとっくに出荷済み
- 持病には医者顔負けの知識あり
- つまづいた ふと見た床に 段差なし
- 動かないエレベーターや押し忘れ
- なぜ消える眼鏡と鍵のミステリー
- 日本語に通訳の要る三世代
- 長生きをするなと政府に仕分けされ
- 脳のシワ顔に出てると孫が褒め
- 腹八分残した二分で薬飲む
- 味のある字とほめられた手の震え
- さびしくて振り込め犯と長電話
- 辞世の句なかなか出来ぬと長生きし
- 老後にと汗した家で一人棲む
- 若者と料金同じ理髪店
- 不満なら犬に言うなよオレに言え
- 孫たちに アドレス聞かれ 番地言う